無線LANローミングという言葉を聞いたことがありますか?
最近ではスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなど多くのデバイスが無線LAN接続に対応しています。
しかし、無線LAN接続を利用する場合には、電波が届かない場所や電波の弱い場所もありますよね?
そこで登場するのが「無線LANローミング」です。
この技術を使えば、電波が届かなくなったところでも、別のアクセスポイントに自動的に切り替わってくれます。
では、無線LANローミングについてもっと詳しく知りたいと思いませんか?
本記事では、無線LANローミングに関する基礎知識から、快適に利用するためのポイント、さらにはIoT機器への適用や5Gとの連携、今後の展望についてまで、幅広く解説していきます。
何気なく使っている無線端末も実は無線LANローミングで快適に利用できていることが多いんです。
例えば、大学や企業のキャンパス内、駅や空港などの公共スペース、ホテルやカフェなどの商業施設などがいろいろなところで無線LANローミングが活用されて、スムーズなインターネット接続を提供しています。
しかし、無線LANローミングを利用する際には、いくつか注意するポイントがあります。
例えば、設定を適切に行わないと、正常に動作しないことがあったり
アクセスポイントの設置場所や設定の仕方によっては、逆に通信速度が低下してしまったりすることもあります。
本記事では、無線LANローミングを快適に利用するたの技術や対処用法そして今後の展望まで詳しく解説します。
無線LANローミングとは
まずは無線LANローミングとはどういうものなのかを説明します。
無線LANローミングの定義と仕組み
無線LANローミングの定義
無線LANローミングとは、移動中にアクセスポイント(AP)の信号強度が弱くなり、別のAPに切り替わる際に、接続を維持しながら自動的に接続先を変更する技術です。
具体的には、異なるAPを使っている複数の無線LANアクセスポイントがある場合、接続中のデバイスは、AP間を自動的に移動し、最適なアクセスポイントに接続します。
無線LANローミングの仕組み
無線LANローミングの仕組みは、異なるAPの信号強度を測定し、現在のAPの信号強度が一定の閾値(しきい値)を下回った場合、別のAPに接続を切り替えます。
一般的には、AP間の切り替えは、IEEE 802.11kや802.11rといった規格に基づいて行われます。
無線LANローミングで利用される規格
無線LANローミングで利用される規格には、IEEE 802.11k、802.11r、802.11vなどがあります。
これらの規格に基づいて、無線LANの接続品質を最適化し、切り替えがスムーズに行われるようになっています。
無線LANローミングが必要なシーン
無線LANのカバーエリア外に出た場合
無線LANのカバーエリア外に出た場合、通信が途切れたり、接続が切れたりすることがあります。そのため、カバーエリア外に出た際に自動的に別のAPに接続する必要があります。
複数のアクセスポイントを利用する場合
学校や病院など広い場所で移動して複数のアクセスポイントを利用する場合、それぞれのAPで接続を切り替える必要があります。ローミング技術によって、デバイスが自動的に最適なAPに接続されるため、ユーザーはスムーズなネットワーク接続を維持できます。
無線LANローミングの仕組み
無線LANローミングは、無線アクセスポイントとの通信に関する機能で、移動中に複数のアクセスポイントの信号を自動的に切り替えることで、ユーザーが常に最適な通信環境を維持できるようにします。
具体的には、以下のような仕組みになっています。
無線LANローミングのメリット
無線LANローミングには、以下のようなメリットがあります。
- 移動中でも、常に最適な通信環境を維持できるため、通信品質が向上する。
- ワイヤレスネットワークの利用範囲が広がるため、より自由に利用することができる。
- ネットワークの信頼性が向上し、ユーザーの利便性が向上する。
病院や大企業ではネットワークを利用したIP電話などが利用されています。移動しながら通話を維持するにはローミング技術は必須ですね。
無線LANローミングの仕組みについて
無線LANローミングに必要な条件
無線LANローミングを実現するためには、いくつかの条件があります。これらの条件が整っていないと、スムーズにローミングが行われず、通信品質が低下することがあります。
APのSSIDが同一であること
ローミングを実現するためには、アクセスポイント(AP)のSSID(サービスセット識別子)が同一であることが必要です。
SSIDは、無線LANネットワークを特定するための識別子であり、異なるSSIDを持つAP間では、ローミングが行われないため、通信が途切れる可能性があります。
AP間のチャネル干渉が少ないこと
APが異なるチャンネルを使用している場合、通信品質が低下し、通信が途切れることがあります。
ローミングをスムーズに実現するためには、AP間のチャネル干渉が少ないことが望ましいです。
そのため、周波数帯やチャネル幅を最適に設定することが重要です。
APのセキュリティ設定が同一であること
APのセキュリティ設定が異なる場合、ローミングに失敗することがあります。
例えば、WPA2 Enterprise認証を使用するAPとWPA2 PSK認証を使用するAPが混在している場合、認証プロセスで通信が途切れることがあります。
無線LANローミングの流れ
無線LANローミングは以下のような流れで行われます。
端末は、アクセスポイントに接続されている無線LANの情報(SSID、チャンネル、セキュリティ設定など)を保持しています。
端末は、接続しているアクセスポイントからの電波強度を定期的に監視し、一定の閾値を下回るとローミングの開始を判断します。
ローミングが必要と判断された場合、端末は周囲にあるアクセスポイントをスキャンし、自身が保持している無線LANの情報と一致するアクセスポイントを探します。
端末は、情報が一致するアクセスポイントに接続を試みます。
接続が成功すると、端末は新しいアクセスポイントに切り替わり、以降は新しいアクセスポイントを通じて通信を行います。
端末は今接続しているアクセスポイントからの電波強度を監視し、必要に応じて新しいアクセスポイントに切り替えることで、無線LANローミングを実現しています。
無線LANローミングの設計
無線LANローミングを設計する前に
無線LANローミングを実装する前に無線LANのモードを確認しておきます。
無線LANの接続はアドホックモードとインフラストラクチャモードの2つがあります。
アドホックモード
アドホックモードは、無線LANカード同士が直接通信を行うモードです。
アドホックモードでは、APを介さずにコンピュータ同士で通信を行うため、ローミングに必要な条件が整っていない場合、通信が途切れてしまうことがあります。
そのため、ローミングにはインフラストラクチャモードを利用することが一般的です。
インフラストラクチャモード
インフラストラクチャモードは、無線LANカードがAPに接続し、APを介して通信を行うモードです。
APは、無線LANカードが通信するための中継点として機能し、複数のAPを設置することで無線LANのエリアを広げることができます。
インフラストラクチャモードを利用することで、AP間での通信ができるため、ローミングがスムーズに行えます。
無線LANローミングの設計方法
無線LANローミングの実装方法を選ぶ際には、以下の2つの観点から選ぶことが重要です。
ネットワーク規模によって設計する
ネットワーク規模が小さい場合は、アドホックモードを利用することができます。
しかし、ネットワーク規模が大きくなると、APの数が増え、AP間の通信が複雑化するため、現在はほとんどのネットワークでインフラストラクチャモードで構築されています。。
セキュリティに対する要件によって設計する
セキュリティに対する要件が高い場合は、インフラストラクチャモードを利用することが一般的です。
インフラストラクチャモードでは、セキュリティに関する設定をAPに集約することができるため、管理が容易になります。
一方、アドホックモードでは、各無線LANカードに設定を行う必要があり、管理が複雑になることがあります。
無線LANローミングのトラブルシューティング
無線LANローミングがうまく機能しない場合の原因と対処方法
無線LANローミングが上手く機能しない場合、以下のような原因が考えられます。
ローミングしない場合の原因と対処方法
APの電波の届かない場所に移動し、新しいAPに接続しなければならない場合、通常の接続ですと手動で新しいAPに接続しなければなりません。その際は設計時点でローミングが機能するように設定しておきましょう。
最近のAPは何もしなくてもローミングに対応している機器がほとんどです。
ほとんどの機器で
だけです。
逆にローミングすることによって想定と違うAPに接続されてしまう場合は「SSIDを異なる値に設定する」など勝手にローミングしないように設計を変更する必要があります。
ローミングに失敗する場合の要因と対処方法
- 無線のネットワークカードが古い
- ローミング先のAPとの接続が不安定
- 無線ネットワークカードのドライバが古い
など複数の要因で、ローミングに失敗することがあります。機器の更新やドライバを最新にするなど、検討をしてください。
無線LANは2.4GHzと5GHzの2種類があります。2.4GHzは利用できるチャネル数が少なく干渉しやすいため5GHzのみを利用するなどの対策でローミングしやすい環境を作ることが可能です。
無線LANローミング時の速度低下や切断が発生した場合の対処方法
無線は目に見えないので実際にどのように接続されているかは電波強度を測定してAPの電波の調整をしたり、クライアントのローミングの積極性を変更する必要があります。
速度低下が起こる原因と対処方法
- ローミング先のAPが過負荷状態にある
-
ローミング先のAPを高性能なAPに変更することを検討してください。
- 通信路に障害物がある
-
物を取り除くことを検討してください。
- 無線LANカードのドライバが最新でない
-
最新のドライバに更新することを検討してください。
切断が起こる原因と対処方法
無線LANローミング時に切断が起こる原因は、通信エラーやAPの不具合、電波干渉などが挙げられます。これらの場合、次のような対処方法が考えられます。
原因 | 対処方(AP側) | 対処法(クライアント側) |
---|---|---|
遠くのAPに接続されている | 無線APの出力を調整して範囲を限定する。 | ネットワークカードのローミングの積極性を変更する。(※2) |
近くのAPにローミングしない | クライアントがローミングする電波強度を調整する(※1) | ネットワークカードのローミングの積極性を変更する。(※2) |
目に見えない無線ネットワークのトラブルは専門業社に依頼しないと解決しないことが多いと思われます。
簡単に対処方法をご紹介しましたが、うまくいかない場合には、無線LANの専門家に相談することをお勧めします。
無線LANローミングのセキュリティについて
無線LANローミングがセキュリティ上のリスクになる理由とは
無線LANローミングは、移動中に自動的に別のアクセスポイントに接続するため、セキュリティ上のリスクが存在します。
以下にその理由を説明します。
ハッカーによる攻撃がしやすい環境になること
無線LANは、物理的な障害物を超えて通信が可能であるため、アクセスポイントの信号が外部に漏れることがあります。
このため、第三者がアクセスポイントの信号を傍受し、ネットワークにアクセスすることができます。
さらに、移動中に複数のアクセスポイントに接続する場合、接続先のアクセスポイントが信頼できるものであるかを確認できないため、ハッカーによる攻撃がしやすい環境になることがあります。
セキュリティ設定が異なるAPに接続する
ローミング中に、異なるアクセスポイントに接続する場合、セキュリティ設定が異なる可能性があります。
たとえば、接続先のアクセスポイントで暗号化方式や暗号化キーが異なる場合、通信が暗号化されず、情報漏洩のリスクが発生します。
また、セキュリティ設定が異なるAPに接続した場合、マルウェアや不正アクセスなどの攻撃によってネットワークに不正アクセスされる可能性があります。
以上のように、無線LANローミングにはセキュリティ上のリスクがあります。
ネットワーク管理者は、セキュリティを向上させるために、アクセスポイントの配置や設定、暗号化の利用などを含めたセキュリティ対策を実施する必要があります。
誰でも接続できるオープンシステムになっていると通信が暗号化されません。共有スペースのAPではこの設定になっている機器が残っていることが多いので「インターネットしたいから!」と安易に繋げないように気をつけましょう。
無線LANローミングの最適化方法
ネットワークの設計による最適化方法
APの配置による最適化
無線LANの性質上、APの配置によって通信品質が大きく変わってきます。
例えば、APが離れた場所に設置されている場合は、電波が届かず通信が途切れることがあります。
そのため、APの配置場所を最適化することが必要です。
APを効果的に配置するためには、建物の構造や壁の厚み、天井の高さなどを考慮して、適切な場所に設置する必要があります。
また、APの台数を増やすことで、電波が届かない場所をカバーすることができます。
しかし、台数が多すぎるとチャンネル干渉が発生して通信速度が低下することがあります。
そのため、APの台数を最適な数に抑えることも大切です。
電波の干渉を避ける方法
複数のAPが近くにある場合、電波の干渉が起こって通信品質が低下することがあります。
そのため、AP同士の距離を適切に取ることが重要です。
また、AP同士のチャネル干渉も問題となります。チャネル干渉を避けるためには、APのチャネルを重複しないように設定することが必要です。
さらに、周囲の電波状況を常に監視し、状況に応じてチャネル設定を変更することで、電波の干渉を最小限に抑えることができます。
きちんとした会社に事前調査や事後調査を依頼すると範囲によって異なりますが数10万〜100万円以上かかることが普通です。ここでお金をケチって後でトラブルにならないようにきっちり予算を抑えておきましょう。
無線LANの帯域幅を最適化する方法
無線LANの帯域幅が狭い場合、通信速度が低下することがあります。
そのため、帯域幅を最適化することが必要です。帯域幅を広げるためには、通信規格を最新のものにすることや、APの機能を活用することが有効です。
また、無線LAN以外の通信と干渉しないよう、周波数帯域幅の調整を行うことも大切です。
まとめ
無線LANローミングとは
- 無線LANローミングは、移動中に接続先のAPを自動的に切り替える技術。
移動しながら無線ネットワークをを利用する際に欠かせない機能の一つであり、ローミングによって、接続先が切り替わる際に通信が切断されずに継続できるため、安定した無線ネットワークがりようできる。
無線LANローミングを快適に利用するためのポイント
無線LANローミングを快適に利用するためには、以下のポイントが重要である。
APの位置を工夫することで、電波の飛び込みやすい場所に設置し、電波の干渉を避けることができる。
セキュリティ対策:セキュリティ設定を適切に行い、不正アクセスなどのリスクを軽減する。
機器の設定:機器の設定を適切に行い、無線LANの帯域幅を最適化することで、高速かつ安定した通信が可能となる。
無線LANローミングを活用して快適なネットワーク環境を実現しよう
無線LANローミングを活用することで、移動中でも快適なネットワーク環境を実現することができます。
例えば、オフィス内での移動やカフェでの作業など、場所を移動してもネットワークに接続したままで業務を行うことができます。
適切な設定やセキュリティ対策を行い、無線LANローミングを活用して快適なネットワーク環境を実現しよう。
Q&A
- 無線LANローミングの設定はどのように行えば良いですか?
-
無線LANローミングの設定は、無線LAN機器の設定画面で行うことができます。基本的には、ローミング機能を有効にすることで自動的に接続先のAPを切り替えることができますが、環境によっては設定が必要となる場合があります。例えば、AP間の電波の干渉が大きい場合や、帯域幅が不足している場合には、ローミングのしきい値を調整する必要があります。
- 無線LANローミングの際に切り替えに時間がかかる場合、どのように改善すればよいですか?
-
無線LANローミングの切り替えに時間がかかる場合には、AP間の距離が遠い場合や、電波の干渉が大きい場合が考えられます。そのため、まずはAPの配置を見直すことが重要です。また、無線LAN機器の設定画面でローミングのしきい値を調整することで、切り替えのタイミングを調整することも可能です。
- IoT機器においても無線LANローミングは必要ですか?
-
IoT機器においても、無線LANローミングは必要です。特に、センサーデータなどを集めるために複数のIoT機器を配置する場合には、AP間をスムーズに切り替えることが重要となります。また、IoT機器によっては、電波の干渉によって正確なデータが取得できない場合があります。そのため、AP間を適切に切り替えることで、電波の干渉を軽減することができます。
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