コロナウイルスもなかなか収まりそうにないですし、うちの会社でもそろそろテレワークを導入したほうが良いと思うんですけど……
そうだよねぇ……
コロナにかかると1週間は休みになるから仕事が回らなくなって困ってることは困ってるんだけど……
それじゃあ!情報セキュリティ事務局でテレワーク導入について話を進めてもいいですか!?
いやいや!やっぱりうちみたいな地方の企業じゃ無理だよ!
周りでも大企業以外はテレワークなんてしてるの聞いたことないし!
そんなぁ……
地方の中小企業では日々このような会話が繰り広げられています。
東京のメーカーさんや取引先と打ち合わせするときはzoomなどを使ってリモートで打ち合わせをしますが、こんなコロナ禍でも地方の営業は現地を走り回って足で稼ぐ営業を続けています。
もちろん社員は全員定時に出社し社内で業務を行い、客先での仕事が終わったら会社に戻って定時まで働きます。
東京の方が聞いたら驚くかもしれませんが、これが地方の中小企業の現実です。
今回は私の経験をもとにコロナ禍でもテレワークができず、コロナ感染との不安や戸惑いと闘いながら出社している方々に向けて。
テレワークを理解して導入していくための方法をお伝えします。
群馬県在住40代サラリーマン
転職して東京の大企業で講師を務めつつISMS運用にも携わる。- インフラSEから講師へキャリアチェンジ
- 30名ほどの中小企業でCISO(情報セキュリティ責任者)として7年間従事
- ISO27001(ISMS)導入
- テレワークなどクラウドを利用してのサービス導入に携わる
- 資産管理ツールやクラウドセキュリティなど導入実績多数
- 情報セキュリティマネジメント保有
- 情報処理安全確保支援士取得
2022年7月時点でのテレワーク実施率
まずは、地域別、業種別でのテレワーク実施率です。
実際どの程度テレワークが浸透しているのでしょうか?
地域別テレワーク実施率
最初に地域別から見ていきましょう。
2022年7月22日に内閣府から全国のテレワーク実施率が発表されました。
日付 | 2019年5月 | 2020年5月 | 2022年6月 |
---|---|---|---|
全国 | 10.3% | 27.7% | 30.6% |
東京 | 17.8% | 48.4% | 50.6% |
地方 | 8.1% | 19.0% | 22.7% |
生活意識・行動の変化に関する調査
(参考)第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(内閣府)
東京都地方で約2倍の差がありますね。
こう見るとそんなに大企業と中小企業で差があるようには感じませんが?
今回のこのデータって東京or地方なんで、地方にも大企業がふくまれているんだよね。
あ、そういうことなんですね、だとすると中小企業のテレワーク実施率はもっと低い、と……
ちょっと古いデータなんだけど群馬県の2020年8月時点のデータがあるから見てみよう。
【群馬県】テレワークの導入状況
回答 | 割合 |
---|---|
導入している | 11.3% |
導入していないが今後導入予定がある | 4.4% |
導入していない | 15.7% |
内閣府のデータと調査時期が3か月ほど違いますけど。ちょっと少ないですね。
そうだね、そのほかに「昔導入していたが現在は導入していない」という項目があってそれが5%あるんだけど、その数字を足すと同じくらいになるかな。
次に従業員数別のデータを見てみようか。
【群馬県】テレワークの導入状況(従業員数別)
従業員数 | 導入済 | 導入予定あり | 合計 |
---|---|---|---|
全体 | 11.3% | 4.4% | 15.7% |
5人以下 | 8.5% | 4.7% | 13.2% |
6~20人 | 5.5% | 3.8% | 9.3%(最少) |
21~50人 | 12.3% | 3.7% | 16.0% |
51~100人 | 11.0% | 5.7% | 16.7% |
101~300人 | 25.3% | 8.3% | 33.6% |
301人以上 | 38.1% | 4.3% | 42.4%(最大) |
生活意識・行動の変化に関する調査
会社規模によってだいぶ差がありますね!
300人以下を中小企業とした場合平均12.5%くらいになるねー。
301人以上を大企業とすると42.4%なので、大企業との差はなんと3倍!
業種別テレワーク実施率
続いて業種別のテレワーク導入率です。
同じく内閣府から出ている2022年7月22日時点のデータを確認しましょう。
業種別テレワーク実施率
業種 | 実施率 |
---|---|
全体 | 30.6% |
情報通信業 | 75.9% |
製造業 | 40.7% |
金融・保険・不動産業 | 39.1% |
卸売業 | 37.7% |
建設業 | 34.2% |
公務員 | 26.1% |
小売業 | 16.2% |
医療福祉 | 12.4% |
保育関連 | 9.5% |
生活意識・行動の変化に関する調査
これもすごい差がありますね。
そうだねぇ、医療、保育、小売業なんかは人がその場にいないと成り立たないから、どうしても低くなってしまうね。
情報通信業だけ突出して高いですね、保育関連と比べると8倍近く……
一応私も情報通信業なんだけど、大企業のメーカーさんたちはほぼ全員テレワークしてて会社には週1で行くか行かないかくらい、って言ってたよ。
中小企業にテレワークが普及してない原因
テレワークって設備だけ買えばできるものですか?
設備が整っていることが大前提だけど制度やルール、社員への教育も必要だよね。
中小企業でテレワークが普及していない原因は以下の3つです。
「設備」が整っていない
テレワークするためにはまず設備などの環境を整えなければなりません。
モバイルパソコン(タブレット)
まずは「テレワークに使うためのパソコンがない。」です。
私の勤める会社でもテレワーク普及前はほぼ全員デスクトップパソコンを使っていて、外出先で必要な社員のみモバイルパソコンを与えられていました。
これでは、テレワークする際にデスクトップパソコンのお引越しをしなければならないので、テレワークなんてできませんよね。
外部からアクセスするための回線
続いては回線の問題です、パソコンはあっても社内ネットワークや社内で利用しているサーバーにアクセスできなければ仕事ができません。
いくら社内システムをクラウド化してもインターネットに繋がらなけれなそれも利用できませんからね。
VPN環境
設備の最後はVPN環境です。
パソコンはある、インターネットにも接続できる、ただし社内の資産は利用できない。となると仕事が進みません。
最近は社内ポータルをインターネット上に置いてどこからでもアクセスできるところが多いかもしれませんが。
ファイルサーバーは社内に置いてあることがまだ多いかと思います。
この3つが整備できればテレワークできます?
そうだね、テレワークできる設備は整ったので次はルールを作ろう。
「テレワークするための」ルールがない
次はテレワークするためのルールです。
ルールがないテレワークを実施すると会社は無法地帯になり、業務が滞ってしまうこと間違いなしです。
またセキュリティ的にも問題が出てきますね。
- テレワークの基本ルール。
- モバイルパソコンやモバイルルーターの利用ルール。
やっぱりルールって大事ですよね。
そうだね、この辺は情報システム部門の力の見せ所!
何もしなければ周りからの不満でストレスマックスになること間違いなし!
「社員の理解度」の問題
最後は「社員の理解度」の問題ですね。
もうテレワークが流行り始めて3年近く経過しているので、だいぶ浸透してきたような気がしますが、中小企業はまだまだ「テレワーク」というものがなんなのか理解できていない方が多くみられます。
情報機器を扱っている私の勤務先ですら理解できていない方がいます。IT系ではない業界の場合はもっと難しいでしょう。
理解度って難しいですね。
あ〜、少し難しく書いちゃったんだけど、さっきはルールでは今度マナーの問題かな。
- 特定の人がいつもいない、とクレーム。
- 特定の人に仕事をお願いしたいのに「テレワークだから無理。」でトラブル。
- 特定の人がテレワークを取得して実際は仕事をせずに遊びに行っててトラブル。
- 会社に来ないと仕事ができない、と言って頑なに出社してくる人。
なかなか、すごい状況ですね。
まぁ困ったもんだけど、上司からの指示を元々聞かない社員や、そもそも上司がこのパターンだと難しいよね……
テレワーク導入を進めるためには
問題点がわかったところで「じゃあ、どうすればいいのよ?」というところに進みましょう。
この3つが原因ならこれを解決すればいいんですね!
そうだね、この3つを解決していこう!
「テレワークするための設備とシステム」を整える
まずはないとどうにもならない設備とシステムからです。
モバイルパソコン(タブレット)
今日からうちも全員テレワークだ!
みんな自席のデスクトップパソコンを持ち帰って仕事してくれ!
あ、明日は全員出社だからパソコン持ってきてね!
とはなりませんよね(笑)
普通のA4ノートパソコンでもよいのですができれば持ち運びしやすいB5サイズのモバイルパソコンをお勧めします。
HPのビジネス用PCが安くてお勧めです。 HP ProBook 635 Aero G8 Notebook PC(60H64PA・Ryzen5/8GB/256S/LTE) スタンダードモデルBOYDを勧めている時期もありましたが、ただでさえセキュリティリスクが高い現在はBOYDを勧めたくないですね。
自席でデスクトップパソコンを使っている場合は、モバイルパソコンと2台持ちがいいんですか?
自席のデスクトップパソコンが入れ替え直後とかでなければ、早めにモバイルパソコンに入れ替えてもらう方がいいかな?
どうしてもデスクトップじゃないとダメ!な場合は2台持ちかなぁ。
自席がモバイルパソコンだと画面が小さくて使いづらいんですが……
自席に大型ディスプレイとキーボード&マウスを置いて、自席で使う場合はそれに接続するといいよ。
たしかに!それなら持ち出すときもパソコンを外すだけでいいので簡単ですね。
外部からアクセスするための回線
続いては回線です。
回線については、VPN接続を前提とするなら自宅のネットワークにつなぐことを許可しても良いと思います。
ただ少しでもセキュリティリスクを取りたくない場合はモバイルルーターや、デザリングできるスマホを契約したほうが良いでしょう。
キャリアは電波が入るところならどこでも大丈夫です。安価に済ませたいなら楽天モバイルがお勧めです。
速度を求めるならBIGLOBE WiMAX +5Gが良いでしょう。
VPN環境
最後にVPN環境の整備をすれば設備面での準備は完了です。
VPN環境って言われてもいまいちピンとこないんですが……
とても簡単に説明するとインターネット上にトンネルを作って通信を保護するってことかな。
通信がインターネット上に出ると危ないんじゃないですか?
それを保護するのがVPNの機能だよ、
以前は専用線を使って物理的に分かれた配線を使っていたんだけど、コストがかかりすぎるので今はインターネットVPNが主流になった感じかな。
うーん、よくわからないんですけど、安全ってことですね。
VPNについてはファイアウォールをご利用中であればオプションでついてることがあります。
Fortinet社のFortiGateなどは日本でも有名なファイアウォール製品ですが、標準でVPN接続するための機能がついています。
さすがに素人には難しいです。
たしかにこの辺のことになると詳しい人に説明を受けないと難しいかもね。出入りしているパソコンの業者さんに聞くのが一番かな。
FortiGateなどの高いハードウェアを購入しなくてもMillen VPN等アプリでVPNを実現しているサービスもあります。
これでテレワークに必要な設備とシステムが整いました。
「テレワークするための」ルールを作る
設備が整ったので次はどう使っていくかルールを作りましょう。
- テレワークの基本ルール。
- モバイルパソコンやモバイルルーターの利用ルール。
実際は会社の環境や業務形態によって変わってきますが、決めておきたいルールは以上の2点ですね。
これ作らないとどうなりますか?
そうだねぇ。
・仕事があるのに人がいない。
・モバイル機器が行方不明になる。
かな。
結構ヤバめですね。
テレワークの基本ルール
どんな規模でテレワークを実施するかで変わりますが、いきなり社員全員テレワークということは無いと思います。
出社している人がテレワークしている人に連絡を取りたい、お客さんからの電話を取り次ぎたいなどの際に、テレワークしている社員とのコミュニケーション方法を決めておくと良いでしょう。
簡単ですが私のおすすめテレワーク運用のルールをご紹介します。
- テレワークする際は事前に部署長に報告し許可を得ること。
- テレワークの際は社内ポータルにテレワーク中ということがわかるように記載しておく。
- テレワーク中も電話や出動に対応できるようにしておくこと。
- 社内ネットワークにアクセスする際は指定のモバイルパソコンと指定のモバイルルータを使用すること。
まあ、なんというか、普通。
そうなんだけど、これすら決めておかないと守ってくれない人もいるんだよ。
モバイルパソコンやモバイルルーターの利用ルール
続いてモバイルパソコンとモバイルルーターの利用ルールです。
- モバイルルーターを利用する際は必ず申請をして許可を得ること。
- 業務以外では使用しない。
- 紛失、盗難に注意する。
まあ、なんというか、普通。(2回目)
そうなんだけど、これすら決めておかないと守ってくれない人もいるんだよ。(2回目)
パケットを共有する契約のモバイルルーターでYoutubeを見まくって月末になると通信制限がかかった、ということがありました。もちろん実行者は上司から怒られていましたが、契約内容を知らないと危険ですので、できれば周知しておきましょう。
「社員の理解度」の問題。
最後は社員の理解度の問題を解決しましょう。
情報セキュリティの導入の際も同じでしたが、一番苦労するのは社員に理解してもらうことです。
このテーマだけで記事がひとつできそうなので詳細はそちらの記事をご覧いただければと思います。(現在作成中です。)
今回は「なぜテレワークをするのか」と「テレワークとは」についてポイントだけ紹介します。
感染拡大を防止するためです。
結果通勤時間が減り、プライベートに使う時間が増えますが、それが目的ではありません。
お客様からお呼びがかかれば対応が必要ですし、電話がかかって来れば対応するのが当然です。
テレワークだからと言って仕事を拒否したり、電話に出ないなんてことはもってのほかです!
遠隔地で仕事をすることです。
遠隔地なので自宅にいなければいけないわけではありません。
客先へ自宅から直接出向いたり、必要であれば会社に出社したりしても全く問題ありません。
もちろん仕事中ですので遊びに行くなんてことはもってのほかです!
この辺は「常識」と「おもいやり」の世界ですね。
そうだね、自分勝手にやりたい放題しているとテレワーク自体の評価が下がってしまってテレワークしづらくなるよ。
それが原因でテレワーク廃止みたいなことになったら目も当てられないですね。
実際そうなりかけてるという話も聞いたことがあるから、この辺の「お常識」と「おもいやり」については各社員が気をつけたいところだね。
まとめ
長くなりましたが最後までご覧いただきましてありがとうございます。
今までやったことのない新しいことを始めるのは多大な労力とコストがかかります。
大企業であれば専門の情報システム部門があり、一般社員も部署ごとに仕事の振り分けがきちんと決まっていますよね。
基本チームで動いているため1人が少し連絡の取りづらい状況になっても仕事が止まってしまうこともないでしょう。
ただし地方の中小企業は1人で色々な業務を兼任しているため、1人が欠けただけで業務が成り立たなくなる事態も発生します。
テレワークの導入については、ルールの順守と社員全員の協力や思いやり、によって成り立ちます。
自分勝手な人やルールを守らない人によってテレワーク自体がなくなってしまうなどのトラブルも発生しかねません。
会社がテレワークしろって言うからしてるんだ!
と言うだけではなく、周りの状況もよくみてテレワークという制度を考えてください。
あなたの上司がテレワーク取得に対して良いイメージを持っていないのはあなたが原因かもしれませんよ?
私の勤務先でテレワーク導入後実際に発生したトラブルと、トラブルを未然に防ぐための
健全なテレワークを導入するための3つの提案という記事を作成しました、導入後のトラブルを未然に防ぐためにもあわせてご覧ください。
会社の情報セキュリティや仕事についてまとめた記事があります。
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